テコンドーの競技

マッソギ心得五ヵ条Rules

マッソギ心得五ヵ条

  1. 崩す(牽制技術)
  2. 畳みかける(多様な連続攻撃)
  3. 呼ぶ(欺瞞戦術)
  4. 合わせる(カウンターテクニック)
  5. かわす(回避テクニック)

マッソギの法則とその研究

① マッソギにおける互いの間合はキックボクシングや空手とそのルールの違いから大きく異なり、基本的にヨンモン(横身)からの蹴りに対する安全距離が基準となる。

② 対峙する相手と自身の間合の関係は大きく分けて4通りになる。

1つはパロソギ(相手左足前構え:自身左足前構え)でもう1つはパンデソギ(相手右足前構え:自身左足前構え)、そして、それぞれ逆パターンが2つずつなので計4通りとなる。

③ 攻撃を仕掛ける際の軌道スペースは4通りある。

これは半身、もしくは横身姿勢から放たれる攻撃のパターンが4通りあるからに他ならない。
1つは前方の手足であり、もう1つは後方の手足であるが、これらは、それぞれ骨盤の旋回起動方向が左起動、右起動に分かれているため2×(1+1)の計4通りとなる。
骨盤が内側へ旋回起動して前方の手足から放たれる攻撃技は、ヨプテリギ、ヨプチャチルギ、コロチャギであり、骨盤が外側へ旋回起動して前方の手足から放たれる攻撃技はチルギ、トルリョチャギ、パクロネリョチャギである。
また、後方の手足から放たれる攻撃技では、チルギ各種、アプチャプシギ、トルリョチャギ、アヌロネリョチャギの様に正面側から放たれるパロコンギョク(特例:後足でのパクロネリョチャギ、カウンデピトゥロチャギ)と ヨプテリギ、トラヨプ
チャチルギ、トラトゥィッチャチルギ、パンデトルリョチャギ、パンデトルミョコロチャギ、パンデトルミョネリョチャギの様に背面から放たれるパンデコンギョクがある。

④ ポイントロスを軽減させる方法にマッキキスル(受け技術)とピハギキスル(避け技術)が挙げられるが、中でも最も有効な手段はピハギである。
     ピハギは、トルギ(スイッチング)、ナガギ(前進)トゥロガギ(後退)、ティギ(ジャンピン)、モムナッチュギ(ダッキング、スウェーイング)の総称である。

③④に見られるように4通りの立ち位置と4通りの攻撃軌道スペースがあるということは、安全距離を確保した位置において対応しなければならない方法が単純に16通り在ることになる。
さらに、詰め寄る対処、その場での対処、離れての対処と3つの基本対処法を踏まえると、これも単純に16×3=48通りの対処法が必要となる。
しかし、ピハギ技術(トルギ、ナガギ、トゥロガギ、ティギ)を駆使し常に相手と自身の間合を一定に保つことができれば半分の24通りの対処法で済ませることができる。
この方法は大きく2つある。
1つは競技中、目まぐるしく移り変わる相手の立ち位置に合わせて自分自身がピハギ技術を駆使し相手の距離と角度を常に左右関係なくパロソギとして一定に保つことである。
もう1つは競技中、自身が立ち位置の角度を変えずにピハギ技術を駆使し、ただ、距離のみを調整する方法がある。
これは相手の立ち位置に対し、パロソギ、パンデソギの変化は許容するが常に片側しか許容しないので結果的には前者と同じ確立で済む。
ただし、確率の観点からは以上の様な流れになるが、現実的には利き腕、利き足が存在するため幾分、後者が有利となる。
したがって、ポイントロスを軽減させる観点からは左右の内、得意とするカウンター攻撃を軸に前者と後者の使い分けを行うのが望ましい。

⑤ 牽制に用いる攻撃は基本的に前方の手足から放たれる攻撃技となる(ただし、難易度は高いが即時防御姿勢を取れるパンデチャギも有効)。

例:前足体重及び前傾姿勢によるチルギ、ヨプテリギもしくは、後足体重及び後傾姿勢によるヨプチャチルギ、コロチャギ、トルリョチャギ、パクロネリョチャギ。
牽制の目的は2つある。
1つは相手の後退距離や反応速度を確認することであり、もう一つは自身のバイタルスポットの露出を抑え安全確保をしながらも相手の防御および 攻撃準備姿勢を崩し、隙を作ることにある。

⑥ 欺瞞戦術(フェイクテクニック)には、捨て蹴りや、前手足による攻撃と見せかけるナガギ(前進移動)、後足からの攻撃と見せかけるトルギ(スイッチング)、ティミョコンギョクと見せかけるトゥイギ(ジャンピング)等があり、どれも安全を確保された防御姿勢を即時取れる状態で行われる。また、時にはホナプチャギ(混合蹴り)やヨンソクチャギ(連続蹴り)を用いるほか、掛け声も技となる場合がある。

欺瞞戦術の目的は牽制攻撃と同様、相手の反応を探ることの他に「合わせ(カウンター攻撃)」をしかけるために用いる。

⑦ 後ろ足からの攻撃軌道における処理時間短縮にはパンモン(半身/Lスタンス)とヨンモン(横身/パラレルスタンス)の使い分けが有効。

骨盤が内側へ旋回起動し、前足で放たれる蹴りならびにパンデチャギはパンモンに比べヨンモンから放つ方が処理時間は短く、特に骨盤の回転域を考えるとトラヨプチャチルギよりもトラトゥイッチャチルギの方がその処理が速い。
また、パロチャギを行う場合はヨンモンよりパンモン、パンモンよりオンモン(前身/ウォーキングスタンス)から放つほうが速くなる。
ただし、オンモンは急所の露出部分が大きくなるため長時間その姿勢を取ると危険となる。
このような観点から、競技中のスタンスはパラレルスタンスとLスタンスをその時々の状況に合わせて使い分けるのが望ましい。

⑧ 連続攻撃を放つ際は攻撃終了時の足の落とし位置が重要となる。

間髪入れずに有効打をつなぐ場合に最も重要な要素となるのは次の2つである。
1つは、打撃開始直前直後の爪先とかかとの向きである。
チャギやチルギの照準となる骨盤や胸の向きは足の向きで決まるからに他ならない。
もう1つは、スタンスの幅である。スタンスの幅が広くなればなるほど軸足を置き換える際に生じる重心移動に時間を割いてしまう。
重心移動に時間がかかればそれだけ相手に隙を与えることになるからである。
したがって、連続攻撃を放つ際の攻撃終了時における足の落とし位置は肩幅内で次に用いる打撃に沿った足の向きとなる。

⑨ 蹴りのリーチは骨盤の角度が決め、蹴り所要時間は、その軌道距離と瞬発力が決める。

効果的なパンチも同じく胸の角度がそのリーチを決め、その所要時間はやはり所要時間と瞬発力が決める。

⑩ 互いが安全距離を維持している場合、手技はティミョチルギ(反対:ピハミョチルギ)に見られる蹴りの間合から放たれる跳び突き(ティミョ・チルギ)のみが有効となる。

これは前足の蹴りを完了する時間に等しいために効果が見られる。
例:踏み込み時間+露出した側のチルギ=踏み込み時間+腰の回転+後手からのチルギ=前足の蹴り(完了まで)。

⑪ 相手の攻撃により態勢を崩したり、カウンターのタイミングを見逃したりした場合は、ピハギ技術を駆使し、即時安全位置に回避しなければならない。

A  接近戦における回避
特に間合の詰まった状態では連続チルギなどに翻弄させられる危険がある。
このような場合はステッピングを用いて左右に回避するが、止むを得ない場合はモムナチュギ(ダッキング)でクリンチをするか、もしくはティミョ・チルギを持って相手の手技による連打を回避する。
また、有効なカウンター手段としては、相手に背を向けエスケイプと見せかけながらショートカットぎみのバックキックを放つ方法が挙げる。 

B  蹴りの間合において態勢を崩した場合
態勢を立て直すために一度大きく離れる。 

C  カウンターを外した場合
即時に間合を詰めるか、フゥローの打撃を入れながら安全な距離を確保する。

D  サイドキックで執拗に攻められる場合
対峙する相手に対して横へ横へと回り込み、直進的な連続攻撃を避けるもしくは、互いの位置関係をパンデソギ(オープンポジション)にしてカウンターを備える。
また、マッキを用いて強引に相手の姿勢を崩すことも時には可能となる。

国際師範 金 省徳


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